其の二十四 常にバランスを取り、平衡状態を維持しようとするのが生命体の働き

沖導師は、バランスについて、また次のように述べています。

「刺戟と反応のバランスのとれていることが健康で、体が内外ともに整っている状態である。刺激と反応の不平衡が体のアンバランス状態であり、不平衡から平衡に還ろうと動く場合に異常を感じるのであって、これが病気でありまた苦悩である。つまり生きているということは常に平衡状態であろうとする働きをいうのである。この働きは保護すれば弱くなり、鍛えれば強くなる。」(1960沖正弘『ヨガ行法と哲学』霞ヶ関書房55頁)。

私たちは外界の変化を五感で感じ取っています。目で見、耳で聞き、鼻で嗅ぎ、舌で味わい、手で触れること全てが刺戟であり、それに対して過敏にも鈍感にもならず、刺戟の度合いに応じて、そのまま素直に反応する状態が健康体です。

しかし、受けた刺激に対して過度に感じたり、逆に不感症になったりしている場合、アンバランス(不平衡)状態となります。もともと生体には生命力(生命を維持するための能力)が備わっていますから、外界からの刺戟に対して五感(感覚)を正常(鋭敏)に働かせようと努め、何らかの不平衡が生ずればそれを平衡に還そうとします。

そのときに感じるのが異常であり、病気であり、苦悩であると沖導師は教えました。これは変だな、何かおかしいぞとモヤモヤしたとき、このままではいけない、元に戻ろう、何とかしようという意識が生じてきます。そうして、身体的に異常を知らせようとするのが病気であり、精神的に異常を知らせようとするのが苦悩であるというわけです。

この、常にバランスを取り、平衡状態を維持しようとするのが生命体の働きで、それが高いほど健康体となります。では、どうやってバランス維持力を高めたらいいかというと、まず五感を鋭敏に働かせ、次に五感を元に第六感(直感や霊感)を高める必要があります。バランス維持力は「保護すれば弱くなり、鍛えれば強くなる」とのことです。(続く)