其の二十二 食べられることを喜びとする果物は“高級互恵食品”

何をどのように食べるべきかについて、沖導師は次のように教えています。

「何を食べるべきかは、その人の、その時(季節のもの)の、その所(生活している地方で産したもの)に適したものを選ぶべきである。つまり生命力の強いもの(蒔けば生えるもの)、できるだけ自然に近い調和のとれたもの(野草、山菜、果実等)、生食(調理しないもの)、完全食(葉・茎・根・頭・骨皮のまま全体をとる)、自然食(加工しないもの)を選ぶべきである。」(1960沖正弘『ヨガ行法と哲学』霞ヶ関書房52頁)。

その季節にとれる物には、その季節を乗り越えていくための力が宿されています。夏の果物には水分を補給し体を冷やす働きが、冬の野菜(根のもの)には体を温める作用があると言われています。陰陽で言えば、果物は陰性、冬野菜は陽性となります。

その地方でとれる物には、その地方の食事のバランスをとる(偏りを中和させる)働きがあると聞きます。たとえば、海辺に住めば新鮮な魚類を沢山食べますが、海辺に続く山の斜面でとれる柑橘類もよく食べることになります。魚類と柑橘類は相性が良く、酸味の強い柑橘類は魚の生臭さや脂っこさを中和してくれます。

蒔けば生える物ですが、その例に玄米があります。水に浸したガーゼに玄米を置けば芽を出します。白米よりも玄米のほうが、生命力が高いというわけです。

自然に近い調和のとれた物として挙げられている果実は、まさに動物にとって「食物の王様」です。それは、(動物に種を運んで貰うためとはいえ)動物に食べられるために実を結んでいるからです。動物に食べられることを喜びとする食べ物なのですから、ウィンウィンの関係として、これほど双方の喜びに満ちた“高級互恵食品”はありません。

調理しない生食は、野菜や魚類、果物などに沢山ありますね。完全食は、大根を葉と一緒に食べることや、小魚を丸ごといただくことが例になります。

それから、加工し過ぎないことで素材を生かす方法は、日本料理の基本型だと思います。寿司料理は、その好例でしょう。(続く)