人の言うことを聞かないカラオケ会話、言葉尻だけ掴まえて話題を自分のほうに持っていく尻取り会話。どちらも言い放しであり、対話を重ねての深まりというものがありません。
まあ、雑談ならそれで構わないのですが、仕事や活動における会議で、カラオケ会話や尻取り会話が当然のように起こっていたら相当問題です。そうならないためには、今日は何を議論するのかについて、予(あらかじ)め主題を決めておくべきです。
そして、主題となるテーマが設定されたら、それに基づいて長期的なビジョンを構想したいのか、中期的なシナリオを設定したいのか、それとも短期的なハウツー(問第解決策)を練りたいのかについて、前提を明確にしておきませんと話がちぐはぐになります。
一般に長期的な話になるほど理想的・空想的・観念的になりがちですし、短期的な話になるほど具体的にはなりますが、目先しか見ていないために場当たり・横並び・先送り、つまり様子見の結論になりがちです。
ちゃんと進行役が、この会議で出して欲しい知恵は長期に対するものなのか、短期に対するものなのか、あるいはそれらを繋ぐ中期についての方針なのかについて打ち出し、衆知がしっかり集まるよう誘導せねばなりません。
人には、それぞれ性格と好みがあります。空想家として長期的な展望を語るのが好きな人、現実主義者として短期の対策を練るのが好きな人などがおり、それぞれ自分の好きな立場から主張を繰り返します。そのままだと、段々カラオケ会話や尻取り会話になっていくという次第です。
そういえば講義が終わった後の懇親会で、質問があると言って講師の横にやって来る人がよくいます。勿論大歓迎なのですが、お話が長い。一体質問なのか、それとも意見を聞いて欲しいということなのか、よく分からないという状態です。
やっと質問が出たので、それではお答えしようと思ってこちらが話し出すと、たちまち上の空となって聞いていない。長年講師をやっていると、そういうことに遭遇いたします。
でも、その人は誰かに持論を聞いて貰いたいと思って講座に来られたのでしょう。その相手がたまたま講師だったというわけでしょうから、聞き役にならせていただくことにしております。
但し、他の参加者もおられますから、全体に気を配りつつ要点を聞くだけにさせていただきますが…。うんっ?! 結局自分も、相手の言うことをあまり聞いていないじゃないか。ということは、やっぱり私もカラオケ会話をやっているのだし、やっと言葉尻に出た質問に答える程度なら、それこそ典型的な尻取り会話ということなのかも…(反省)。(続く)