その26 宇宙は不完全、それを進化発展させるところに人間の使命がある!

何が正しいかについて、あれこれ思うところを述べてみました。正しいことであるほど、調和して美しくなり、周囲とも和合し、物事が上手くいくようになるはずです。それが基本なのですが、世の中に完全はありません。正しいものが必ず世に受け入れられ、正義が常に勝つわけではないのが現実です。

それを健康に置き換えるならば、健康に良いとされる食事を摂り、普段から肉体の鍛錬に励みながら短命であったり、反対に不摂生で自己管理が苦手、自己中心的で強欲な輩(やから)が予想に反して長命であったりするという現実があります。人生においても、こんなに素晴らしい人格の人が、なぜいろいろな苦しみを背負って不幸に陥るのかと、不思議に思うことがあります。

正義が必ずしも通らず、善が必ずしも栄えないのはどうしてでしょうか。
この疑問について、筆者は若い頃、大和言葉・古事記・国学の師である河戸博詞先生に質問したことがあります。

師は答えました。「宇宙は完全ではなく、進化の途中にある。世界が不完全である以上、どうしても病氣に悩み、不幸に陥る人が現われてしまう。残念ながら、それは仕方のないことだ。しかし、だからこそ人間は、完全に向かって進化発展し続けねばならない」。

古事記の冒頭に、「クニわかく浮きし脂(あぶら)のごとくして、クラゲなす漂へる…」と書かれています。宇宙の初期は、浮いたアブラや漂うクラゲのようにブヨブヨしていて、まだ何も整っていない状態であったという説明です。
クニは、手間をかけて組まれたものを意味する大和言葉で、ここでは宇宙という結合体を意味しています。

やがて、宇宙の生成が進み、地球が成立し、最初の人間であるイザナキの命とイザナミの命が現われます。宇宙の神々である「天つ神」は、イザナキとイザナミに「この漂へるクニを修め理(つく)り固め成せ」と命じてアマノヌボコを与えました。「漂へるクニ」は、まだ発展の途中にある宇宙のことです。生成されたとはいえ、宇宙は未完成であるということを意味しています。

つまり、この神話は、人間は未完成の宇宙を、さらに進化させるために登場したということを表しているのです。宇宙が未完成であるからこそ、人間の誕生に意味があるというわけです。

それだけに、人間には努力が求められますし、それに伴う失敗もあって苦労します。また、宇宙が完全でないということは、人間も完全ではないのであり、病や悩み、何らかの不幸を背負ってしまう人も現れてしまいます。というか、誰もが何らかの不調や煩悶を抱えて生きているのです。

しかし、天津神はイザナキとイザナミにアマノヌボコを与えています。ヌボコのヌは沼、塗る、ぬるぬるのヌで、一様にまとめていく意味を持つ音です。
アマノヌボコは、宇宙をひとつにまとめて進化させる力の象徴です(ホコは両刃(もろは)の剣(つるぎ))。筆者は、アマノヌボコを貰ったのはイザナキ・イザナミだけではなく、あらゆる人間が受け取っていると解釈しています。
(続く)