其の六十 これもダメ!話がそれていく尻取り会話…

あるいは、カラオケ会話の亜種に「尻取り会話」というのがあります。これは言葉のキャッチボールが出来ているようでありながら、実のところ相手が語る内容の言葉尻だけを捉えて反応しているものです。相手の発言の一部だけ使って、自分の言いたい事や自慢話に持っていこうとする会話ですので、遣り取りに深まりというものが起こりません。

例えば、こんな遣り取りが尻取り会話です。

A氏「かつてソ連が崩壊したとき、人民は決して飢えることが無かったという。それは、家庭菜園でジャガイモ栽培が盛んであったからだ。そこで私は、食糧危機への対策として各種芋の栽培を提案する。」

B氏「芋なら薩摩芋が有名だが、私の郷里である薩摩の人物と言えば、やはり西郷隆盛だ。今の日本にも、西郷さんクラスの志士が現れて欲しい。そこで私は、志士を育てる人物教育を提唱する。」

C氏「いやいや、教育に必要なのは学校であり、校舎は是非とも木造が良い。私の知り合いに、天竜杉を扱っている者がいるから、諸君に一度紹介するとしよう。」

A氏が言いたかったのは、芋による食糧危機対策です。B氏はその言葉尻を取って、芋→薩摩→西郷さん→志士教育というふうに、話をそらせていきました。そしてC氏は、教育→学校→校舎は木造→天竜杉の知り合いというふうに、これまた話の筋をどんどん外してしまう有様です。これでは会話が全然深まらず、雑談の域を出ません。少し注意して聞いてみると、こんな尻取り会話が随分多いことに気付かされます。(続く)