人間が主役の座を保ちながら、生成AIを生かしていく筋道

AI(人工知能)がどんどん進化しています。AIに「林英臣」や「林英臣政経塾」について質問してみたところ、かなり正確で、しかも「言って欲しいことを言ってくれるなあ…」と感心させられる文章を返してくれました。もうビックリです!

AIは学習したデータをもとに、新たなテキスト(文章)や画像、音楽などを生成します。それが「生成AI」です。大抵(たいてい)の文書や論文は、生成AIに頼めば、なんとかしてくれる時代に入っているようです。

そういえば、「松下幸之助」の再現AIが開発されたそうです。松下幸之助氏の「思考」を言葉としてAIに学習させてあり、画面上の松下氏は、まばたきしたり口元を変えたりしながら、企業家からの質問に的確に答えてくれるとのことです。

経営の神様と呼ばれた松下氏の哲学思想は、厖大(ぼうだい)なデータとして残されています。それを元にすれば、あらゆる角度からの経営相談に答を出してくれるのは当然のことでしょう。そこに経営や経済に関する最新の情報を織り込んでいけば、「松下幸之助が生きていたら、きっとこう語るだろうな」と思われる言葉が出て来てもおかしくありません。

でも生成AIは、どんなに進歩しても、あくまで学習したデータの中から回答するのが基本です。「新たな閃き」と言いますか、「そこまで言うか!」と感じるような飛躍的で創造的な「神様の声」までは、やはり生み出すのは困難と考えます。どこまでいっても、基盤としている「学習した情報」から、大きく飛び越すことは難しいのではないかと…。

松下氏は、松下政経塾の入塾面接試験を自ら担当されました。ある雑誌記者から、「何を基準に合否を決めましたか?」と問われたとき、それは「運と愛嬌」だと答えています。

記者は、「愛嬌はともかくとして、運はどうやって見分けるのですか」と質問を重ねます。そのときの答が、「長年の勘(かん)やな」というお言葉でした。

松下塾長は、別のところで「勘ほど確かなものは無いんや」と述べています。運という掴みにくいものを、勘という不確かなもので見分けるというのですから、記者は黙ってしまうしかありませんでした。

この「運を見分ける勘」といったものこそ、AIに代わってもらうことの出来ない人間の特性ではないかと思うのです。勘は「天につながる」人間だからこそ、成せる技であると。

東西文明が800年毎に周期交代しているという事実を研究された村山節先生は、若いときに天からの声を聞いています。「歴史は直線の分析より始まる」という声がそれで、その啓示を受けて文明法則史学を発見し、やがて大系化されたのです。

かく言う林も、17歳のときに受けた「21世紀は、人類にとって大変困難な時代となる。しかし、世界の危機を救うカギが東洋にある。おまえはこれから東洋を学べ!」というメッセージを受けたことが綜學への入り口でした。

これからの教育は、知識の習得で終わらず、いかにして天につながるかが益々重要となるはずです。それは、まさに東洋思想の一大特質であり、東洋が持つ梵我一如(宇宙と人間は一つ)、天人合一、神人合一という思想こそ、人間が主役の座を保ちながら、生成AIを生かしていく筋道に違いありません。
(政経倶楽部連合会 日本政経連合総研レポート第94号より)